立春の候、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
“ 東風吹かば匂いおこせよ梅の花主無しとて春を忘るな ”
「春の風が吹いたら、また美しい花を咲かせて香りを届けておくれ、梅の花よ。私がいなくなっても、春に花咲くのを忘れないでいておくれよ。」
この短歌は、無実ながら政略により京都から大宰府に左遷された菅原道真公が、大好きだった京都の紅梅殿の梅に向けて詠んだ歌として、ご存知の方も多いかと思います。この話は現在も「飛梅伝説」として語り継がれており、毎年この時期になると、大宰府天満宮(福岡県)の境内にある約6000本の白梅・紅梅が、その芳しい香りで参拝者を包み込んでくれます。
同じく見ごろを迎えた江戸川区の葛西臨海公園の花々とともに、ぜひ歌の世界に思いを馳せてみてください。
この時期になると聴きたくなるのが、松任谷由美さんの『春よ、来い』。梅の花を見上げながら歌の詞一つ一つを思い描いてみると、外国語への翻訳が難しい、日本語ならではの語感やその表現に思わず感じ入ってしまいます。
最後に、緋寒桜とメジロの可愛らしい一枚を。
次第にあたたかくなっていく日々を待ち望みつつ。どうぞ、みなさまご自愛くださいませ。
※タイトルは芭蕉の句で、「芳(かぐわ)しい梅の花が厳しい余寒の中に凛として咲き匂っている。その様を見ると、この梅の香りに寒さが追い戻されてきたかとさえ思える。」の意。