堀内法律事務所のブログ「止まり木」にようこそ。

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「当意即妙」 

 思い出すたびに笑ってしまう楽しいジョークがある。私のとっておきはイギリスの元首相チャーチルのジョークだ。
当意即妙2 イギリス初の女性下院議員のアスター子爵夫人と口論になったとき、負けず嫌いの彼女がチャーチルにむかって腹立たしく言った。
「ウィンストン、もしあなたが私の夫でしたら、コーヒーに毒を入れますわよ」
 チャーチルは答えた。
「もしあなたが私の妻だったら、それを即飲んでしまうでしょうな」

 チャーチルのジョークをもう一つ。こちらは第二次大戦中にホワイトハウスに招待された際の伝説的なジョークである。
 その晩チャーチルはルーズベルトと内密な打ち合わせをする予定だったが、ルーズベルトが遅いので風呂に入ることにした。風呂に浸かり始めたその時、誰かが部屋に入ってきてチャーチルの名を呼んだ。誰だろうとチャーチルはバスローブを羽織るのも忘れて風呂を出た。それがルーズベルトだとわかって仰天したが、素っ裸のチャーチルを見てルーズベルトはもっと仰天した。ここで慌ててはいけないと思ったチャーチルはとっさにそのまま腕を悠然と広げ言った。
当意即妙1「ようこそ大統領。ご覧のように大英帝国首相は合衆国大統領に対して何一つ隠し立てするものはありませんぞ」
 こんなにもウィットに富んだことを当意即妙に言えるとは、チャーチルはよほど頭がよくて、言葉のセンスも卓越した人物だったのだろうと感心せずにはいられない。

 そんな人物はめったにいないのだが、それが私の個人ランキングで第二位に輝く人物が現れた。あくまでも個人レベルのランキングで、チャーチルとは比べようにないのだが・・・。
 家族と伊豆に旅行に出かけたときのことである。当時八十を過ぎても意気盛んな祖母は大の温泉好きで、旅館に着くや否や一人でお風呂に行ってしまった。
 これはその後に本人から聞いた話なのだが、
 時は午後三時。大浴場に客はなく、一人で心ゆくまで湯につかり、やおら湯船から出て立ち上がったとき、浴場の戸が開いて誰かが入ってきて対面となった。それが男性だったので、祖母はびっくり仰天したが、その男性のほうがもっと仰天したようだった。だが男性はすぐに気を取り直し、穏やかに言った。
「この世の見納めにたんと眺めていきなされ!」
 この温泉は混浴だったのではない。祖母が男湯に間違って入っていたのだ。
「頭を丸めておられたし、黒い袈裟のようなものが脱がれてあったから、お坊さんだったのかねぇ……」
 温泉の熱気と恥ずかしさで、顔を真っ赤にさせて祖母が言った。
「う~ん、その人は名だたる高僧だったかもしれないわね……」
 私は笑いながら言った。
当意即妙3 そんな緊急時にそれほど慈愛に満ちたジョークをとっさに言えるなんて、よほど修行を積んだお坊さんに違いない。その推理に家族全員が頷いた。
 あれから何年経ても、当意即妙な高僧のジョークはいまだに忘れられない。思い出すたびに笑いと感動がこみ上げて来る。
 次は第三位の発表だが、長くなるので次回また。
 ―続く。

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