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おすすめの本『Lost in Translation』

 先日、友人達との食事の席で、各々の名前を中国語読みするとどのようになるかという話題から、中国語読みができない漢字ということで、国字の話になった。そのとき、「畑」が国字であるということを初めて知ったのだが、中国に日本語の「はたけ」に該当する漢字がなかった(「田(た)」と明確に区別されていなかった)ため、古き日本人が「はたけ」をどうしても「田」とは区別した漢字で書きたかったということらしい。日本人の「はたけ」という言葉に対する心意気を感じ、「畑」という字自体がなんだかいとおしくなった。

『翻訳できない世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース著、前田まゆみ訳。創元社、2016年。)は、世界のさまざまな言葉について、人々のそんな心意気が感じられる本である。

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 この本は、世界各国の言語の中から、他の言語に翻訳し難い言葉が、著者の想像力豊かなコメントで紹介されている(原書は英語。)。
 冒頭に紹介されているのは、ノルウェー語の「ポーレッグ」という名詞で、「パンにのせて食べるもの、何でも全部」を意味するという。チーズも肉も野菜も全部「ポーレッグ」ということなので、日本語におけるごはんの「おかず」のような言葉なのだろう。しかし、この本に出てくるということは英語(や他のヨーロッパの言語)には同様の単語はないということだろうか。パンの食べ方も場所によっていろいろなのかもしれない。

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 他にも、「ポロンクセマ」(トナカイが休憩なしで疲れず移動できる距離、という意味のフィンランド語)や「ムルマ」(足だけを使って水の中で何かを探すこと、という意味のワギマン語(オーストラリア先住民の言語とのこと))など、それを単語にするか!という独特な言葉が多数紹介されている。各ページには、それぞれの言葉をイメージした幻想的な絵が描かれており、眺めているだけでも面白い。日本語からも何語か選ばれており、少し誇らしい気持ちになる。どのような語が書かれているかは読んで確かめてもらいたい。

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 なお、この本の原題は『Lost In Translation』という(直訳すると「翻訳すると失われるもの」という感じであろうか。)。このタイトルを見ると、2003年頃に、東京を舞台とした同名のアメリカ映画があったことを思い出す(監督:ソフィア・コッポラ、出演:ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソンほか)。この映画は、サウンドトラックを、当時事実上の活動休止状態にあったマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのフロントマンであるケヴィン・シールズが手掛け、しかもそこにはっぴいえんどの名曲「風をあつめて」が収録されたことも話題となった。マイブラといえば80年代後半から90年代前半にかけてイギリスで起こったシューゲイザー・ムーブメントの代名詞的なバンドであり、日本では2008年のフジロックフェスティバルでのステージが凄まじく・・・(おそらく一部の人以外には、翻訳できない外国語のような話だと思われるので、以下割愛する)。

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