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国民調査

 もうすぐ新米の季節がやってくる。炊きたてのごはんがとびきり美味しくて、それだけでご馳走だが、さらに美味しく食べるために、ごはんのお供を一品選ぶとしたら何にしようか。
 新米1「何はなくとも、桃屋の江戸むらさき」というCMが昔テレビで放映されていたが、私はやっぱり明太子だ。何はなくとも明太子!できれば福岡の明太子がいい。熱々のごはんに明太子さえあれば、言うことなしである。
 ところで日本国民なら誰でも炊きたてのごはんを好むと思うが、お供の一品にはなにを選ぶのだろう?早速調査にとりかかってみた。といっても対象は、私の友人や知人限定のごく小規模な国民調査だった。
 まずは仲良しの暢子さんと寿美子さんに聞いてみた。

「なんと言っても梅干よ!」と暢子さんが言った。
「柔らかな果肉の、高級梅干でしょ?」
「ううん。自分で漬けたもの。シワシワで固い梅干。あれでごはんをもりもり食べたいわ~」
 現在闘病中で、厳しい減塩生活に耐えている彼女の言葉はちょっとせつない。
「私は壺漬けがいいな。ごはんを引き立てる名脇役って、漬物だと思うわ!」
と、九州出身の寿美子さんが断言した。
 漬物ね……、ぬか漬けのつややかな茄子や胡瓜が思い浮かんだ。だが、私の中で明太子は不動だ。
 翌日美容院に行ったので、美容師の西川君にも質問してみた。
「う~ん。むずかしいっすね。自分的には鮭かな。今なら戻り鰹のたたきもいいし、シラス干しに大根下ろしも捨てがたい……、う~ん、やっぱ鮭にします! マジ三杯はいけます!」
 鏡の私ににっこり笑って言った。海のない県の出身と聞いていたが、意外にも魚好きだったのね。
 その晩、甥っ子のミッキーがやって来たので、彼にも協力を要請した。
「そりゃあ、絶対卵でしょ! 卵がけごはんなら何杯でも食べられるよ」
 ミッキーは昔からせっかちだったが、卵がけごはんとは彼らしい。たくさん食べられるけどご飯そのものを味わっているのかな?
 仕事仲間の翠さんにも尋ねてみた。
「今ね、炭水化物ダイエットしているから、そういう質問は困るんだけど……あえて言うならタラコかキムチよ。やっぱりタラコにするわ!キムチは韓国の民に譲る。上等なタラコをお刺身のように切って、炊きたてのごはんと共に食べるの。あ~あ、食べたくなっちゃったじゃない。だから困るのよ!」
なんだか嬉しそうだ。長い付き合いだがそんなにもたらこが好きだったとは知らなかった。
 国民調査も終わりに近づいた頃、大学のゼミの先輩の村木さんがメールをくれたので、返信のついでに質問を添えておいた。すると、
「美味しい塩辛で日本酒を飲んだ後、残りの塩辛を炊きたて御飯にのっけて食べるのが最高!」と、いかにも酒豪の村木さんらしい答が送られてきた。
新米2 最後に小さな会社を経営している知人に聞いてみた。
「それはネギ味噌だよ!」と、何の迷いもなく答えた。
 少年時代、彼の実家では日曜農業をやっていて、春になると畑にネギが育ったという。その柔らかな穂先を刻んで味噌とまぜ、母がいつも食卓に並べてくれたと懐かしそうに語った。表情がいつになく弛んでいる。
 炊きたてのごはんに「おふくろの味」。これ以上のお供はないだろう。

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