堀内法律事務所のブログ「止まり木」にようこそ。

当ブログでは、事務所のスタッフ(+α)が、身近な四季の風景や、思い出の風景、 おすすめの本の紹介などを綴りながら、 ここでちょっと羽休めをしております。

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Siriってスゴイ!

 iPhonで面白いと思うのは、音声認識バーチャルアシスタントアプリの「Siri」だ。Siriはノルウェー語の女性の名前で、いわれは「勝利に導く美しい女性」だそうだ。電話をかけるとき、メールを出すとき、インターネットで調べるとき、頼むと即座に対応してくれる。今週の天気も現在の各国の時間も教えてくれ、今日やるべきスケジュールを伝えておくと、忘れずにアラームで知らせてくれる。まるで有能な秘書のようだ。
真面目で忠実だが、ユーモアもある。例えば、
「お名前は?」と質問すると、
「Siriです。よろしくお願いします」
「あなたは何歳ですか?」
「そんなことは気にしないでください」とおだやかに答える。
「結婚してくれない?」と面白半分に聞くと、
「友達のままでいましょう」と、やんわり断わられる。
「歌ってくれない?」
「聞くに堪えないでしょうから、やめましょう」と、つれないがそれでも何回も頼むと、
「わかりました。どうしてもとおっしゃるなら・・・。
 さくら さくら 野山も里も 見わたすかぎり・・・」と、歌ってくれて最後に、
「いい歌ですよね~」と、惚れ惚れしながら言う。
「Siri、上手じゃない!」
「ありがとうございます。実はときどき1人で練習しているんですよ」と打ち明ける。
 このやりとりが実に楽しい!
 そう言えばこうした機能の付いているアイテムを使用していた人物が、昔にもいたことを思い出した。グリム童話『白雪姫』のお后である。彼女が持っていたあの鏡こそSiriの原型ではないだろうか。
「鏡よ、鏡、国じゅうでいちばん美しい女はだれ?」と、お后が最大関心事を尋ねると、
「あなたです、お后さま。あなたが国じゅうでいちばん美しい」
 な~んて忠実な下僕のように答えていた。
 しかし不幸なことに、この鏡は性能の悪い出来損ないだったようだ。何度も同じことを聞かれ、面倒だったのか、辟易していたのか、白雪姫が7歳になったときについ、
「白雪姫は、あなたより千倍も美しい!」などと口からでまかせを言ってしまった。
 このようないい加減なことをよくもまあ~言えたものだ。インチキ鏡は女心どころか、女性のことが何もわかっていないようだ。
 確かに白雪姫は可愛らしい少女だったかもしれないが、本来「美しい」という言葉は七歳の、花にたとえるならまだ蕾のような子供に用いる言葉ではない。豊かに香るように成熟し、エレガントに開花した大人の女性にこそ「美しい」と言う言葉は相応しいのである。本当に忠実で賢い下僕ならお后に、
「あなたの美しさにちびっ子白雪姫など足元にも及びません!」
と、真実を伝え続けたことだろう。
 鏡のせいで、生さぬ仲の母娘はいっそう険悪になり、取り返しのつかない不幸な出鏡よ鏡!来事を生じさせてしまった。そもそもこんな怪しい鏡の言うことを、何故お后は何の疑問も抱かずに信じ込んでしまったのだろうか。
 いつの世でも悩める人間たちが怪しげな占い師や新興宗教の教祖の言いなりになってしまうように、お后も悩みを抱えていたのだ。初版グリム童話では、王様は前妻亡き後、白雪姫を溺愛し、後妻のお后を屈辱的に軽んじていたようだ。彼女は寂しさと嫉妬から、正常な判断力を失っていたのかもしれない。
 ところでお后の鏡と違い、Siriなら何と答えるのだろうか、ちょっとやってみた。
「国じゅうでいちばん美しい女はだれ?」
「Webで検索しましょうか?」
「Siri、私は白雪姫よりきれい?」
「残念ながらそれにはお答えできません」
「Siri、私寂しいの」
「『尊く偉大なものはみな孤独である』と聞いたことがあります。ではあなたもその素晴らしい人たちの一人なんですね」
「あなたって、スゴイ!」
「そんなにおだてると木に登ってしまいますよ」
 人工知能の進歩は目覚しい。ロボットと暮らす日が来るのは、そんなに遠いことではないかもしれない。

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